« January 2006 | Main | March 2006 »

February 2006

2006.02.23

メールのコピー

 あるメールのコピーと称するものを巡って、てんやわんの大騒ぎ。国会もマスコミも分かったようなしたり顔でああだこうだといっているけど、ミットモナイというか、滑稽というか、いやその前に空しい。空から降ってきた一片の紙切れを巡って、ジョーモン人とヤヨイ人が言い争っているって風景だけど、この間のディスコミュニケーションは洒落にもなんねー。ギャグも通じねー。
 時代の転換期には、こんなに索漠たる混乱が起こるものでしょうか。恐らくここには、明治維新時の文明開化によって生じた時空の歪みよりもっと大きな断層が生じているのでしょうね。西洋かぶれの鹿鳴館派と尊皇攘夷派なら、その外見から察しがついて、互いに会話が通じないことを相互に認め合えたのだろうけど、今回の場合は、日常の付き合いのなかで互いを認識し合うことすら困難なんですね。
 安穏な日々に慣れ切っていて、時代の流れの潮目がまったく読めていない。いわゆる元老院の長老たちがトンチンカンなことを言っているのなら、ヤレヤレですませても良いのだが、なんかさー、イイ若いモンがあんな紙切れを巡って目をつり上げたり、わめいたり……。あんた達、我らのハポンをどこに導こうとしているの?

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2006.02.05

五色の酒

 巴里そのまゝの「バー」が出來たからと伴られて行たのが道頓堀の「旗の酒場」であった、肉色の壁直線式の器具等見るもの皆ハイカラでアチラには長髪の青年文士コチラには庇髪の女流作家とても云ひそうな連中がやれゴルギーがドウのトルストイがコウのと幾組も幾組も吹き立てゝ居る光景は實に別世界に居るやうな心持ちがする、フト心付て前を見ると何時運はれたか五色の水が小さな一ツのコップに盛られてある、サア事だ一体全躰何だろうドウして飲むのだろう飲んだらドンナになるのたろうかと心配と好奇心とが衝突した時にハヽアこれだな近頃噂に聞く東京邊の新しひ女連中が盛に評判の種を蒔く五色の酒と云ふヤツはヨシヨシ僕も一杯ためしてやろうと決心して見たが青赤黄紅褐色と五層の飲み別けには殆んと閉口した元来負けぎらひの僕もこゝに至ては大に窮せりで私かに友人に聞ひて傍らに添えてありた一片の紙袋の中よりスラリとし出した佛國舶來の麦カラ一本勿躰なくも口にくわえてベルモットなら青い所ブランデーなれば黄色の所と各其好む所に先端を突き入れて吸ひ上げ吸ひ上げ飲みほすのであると御手を取ての御指南で漸やく五種五色の飲み別けを覺へた時にナンダ馬鹿々々しひ文明國のハイカラのと自惚連中の遊び仕事はコンナものかと負け惜しみを云って見たのも無理てはない思ひ出せは去年天神祭に店でやつた蓄音機中に
 雨あられ雪や氷とへたつれと落つれはおなし谷川の水
とか何とか講釈した奈良丸の心も五色の酒を飲んだ僕の心持ちも大した違ひはあるまい殊に鈴木式フンムキ、イヌヰ式麦スリ機、報徳フロカマ、サトウ式バリカン、改良麦ツブシ器と五色にわけた綺麗な酒を佐藤六平商店と云ふ小さなコップに盛つて「買て喜び賣て喜ふ相互主義」の麦カラ一本で勝手気儘に吞みほしてもらへば一家經濟の最上策家内はホロ酔ひ機嫌のイヽ心持ちなのだと自問自答も夢の中酔ふた機嫌の千鳥足「マタお近ひ中にネー」とのやさしい聲もおぼろ氣にグートバイよの面白さ
 於大阪 六兵衛(大正2年2月11日「實業タイムス」第1号)

 遠州見附(静岡県磐田市)にて金物商を営んでいた母方の祖父が、販促材として発行したらしいミニコミ誌に上記戯文を発見。後半が体よく引き札調になっているところはお許しを。大正初期の金物屋って、今でいえば家電量販店のような立場だったんですね。

| | Comments (5) | TrackBack (0)

« January 2006 | Main | March 2006 »